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2008年8月

2008年8月18日 (月)

長編SS 24

なのはのリンカーコアへの侵食の加速
それはレイジングハートを手放した当然の結果だった。

レイジングハートは管理局においても屈指のインテリジェントデバイスである。
リインフォースⅡと違い、人間形態を持たぬとはいえ
その処理判断能力と歴戦の経験は並みの魔導師を軽く凌駕する

レイジングハートはその桁外れの能力もって
コアイーターの侵食からなのはを守り続けていた。
それは人間とは違い、24時間活動し続ける事が出来るデバイスだからできた事でもあった。

人は24時間ずっと100%の力で活動を、それも何日も続ける事は出来ない。
だがデバイスは100%の力で活動し続ける事が出来る。
だからこそ、なのはは侵食を受け続けてもこれまで取り込まれずにすんだのだ。

人間はデバイスと異なり一瞬ならば150%、200%の力を出せる
確かになのはの残された力を使えば僅かな間は侵食を防げた
だがそれは一瞬の事。
それが尽きてしまえばリンカーコアへの侵食速度が速まってしまうのは当然だった。

           ○                      ○

   
ヴィータから連絡を受けたクロノ達は素早くこれからの役割を決めた。

なのはの事を考えれば今すぐに駆けつけたかった。
ヴィータの連絡からだけで現在どれほど危険なのか痛いほど理解できる。
だからこそ素早く手分けして行うべき事行う
今はなのはの側で心配している場合ではなく
それぞれがなのはを助けるべく動く時なのだから。

はやてとリインは万が一のときの為にリンカーコアの移植術式の用意に入ることにする。
これは、はやてがリインを生み出したときの魔導式を組みなおすことにした。

リインを除くヴォルケンリッターの4人は
ユーノと共に直ちにジュエルシードの探索に向かう

クロノ、リンディ、エイミィは上層部への対応と場所の確保にあたる
こうなった以上、上層部がコアイーターの破壊もしくは封印を決定するのは時間の問題であるからだ

「ユーノ」
それぞれが役割を確認しなおしている最中、クロノはユーノを呼び止めた。
「なんだい?」
「コアイーターにジュエルシードを〔喰わせ〕、その間になのはを救出するとして、
 その為のジュエルシードの見込みはあるのか?」

それは最もな疑問
元々ジュエルシードは危険指定を受けるほどのロストロギア
存在が確認されているものは全て管理局内にある。
それ以外はP・T事件の際、異空間に消えてしまったはずだった。

「確かに〈ジュエルシード〉は無いよ」
「なっ・・・」
淡々と答えるユーノに唖然とするシグナム達。
それは当然の反応
この手段は〈ジュエルシ-ド〉を〈コアイーター〉に喰わせ、相殺させてはじめて可能なのだから。

「確認されているジュエルシードは全て管理局の管理下だよ。
 でもねクロノ、僕の出身、僕が居る位置を忘れていないか?」
周囲の焦りを受け流すかのように答えるユーノ

「成程な」
「そういうことですか」
それを聞きクロノやリンディはすぐに理解する。

「え?」
いまいち判らなかったのはエイミィ
そして顔色は変えなかったが、はやてもはっきりとは判っていないようだった。
そんなエイミィにクロノが説明をする

「ユーノの出身はスクライア一族。
 スクライアといえば考古学、遺跡探索のエキスパートの一族
そしてユーノは管理局の知識の元である無限書庫の司書長だ」

ここまで言えば判るだろう?
そう意味をこめて視線を送るとエイミィも、
表情は変えずに澄ましていたはやても理解した

つまりユーノは管理局が知らないジュエルシードの場所を知っているという事だった。

「まぁこれは今回コアイーターとジュエルシードがよく似ていたという事が繋がったから
 判ったことなんだけどね」
確かに偶然の確立ではあった
ユーノはなのはと出会う前からジュエルシードの探索をしていて
なのはやフェイト、クロノ達と出会い管理局に入ることになった。
P・T事件でジュエルシードの現物は全て確認され管理局の管理下に入ったが
考古学者の性でユーノは司書の仕事を終えると
ジュエルシードの由来などをコツコツと調べ続けていたのだ

その積み重ねた知識があったからこそ
今回のコアイーターへの対策などに繋がったといえる。

「あと細かい説明はその資料にも書いておいたけれど
 今は便宜的に《ジュエルシード》としているけれど、
これから探すのは昔見つけたジュエルシードとは別物と思って欲しい」
「ここか」
ユーノの説明にクロノは資料の該当項目にざっと眼を通す

そこに書かれていたのは
ジュエルシードはロストロギアの中でも不明な部分が多く
かなり古代から伝承等に乗っている代物だったという事。

「元々コアイーターとジュエルシードは全くの別物で
 ジュエルシードは次元干渉能力に特化したロストロギアだと思われます。
けれどそこに込められた凄まじい魔力から《願いを叶える》なんていう噂が生まれたんだと思われます。
そしてコアイーターはそんなジュエルシードの伝承を元に
戦略兵器、そして無差別の魔力蒐集を目的として作られました。
今回の事では《ジュエルシード》は全く関係無いものなんです」

思えばP・T事件の際もプレシア・テスタロッサはジュエルシードを使い
失われた都市アルハザードへ次元干渉を行おうとしていた。
もしジュエルシードがただ魔力と集めただけの結晶なら
プレシアも別の使い方をしただろう。
そう思えば確かに納得できた。
プレシアは最後は狂気に近いものに捕らわれてはいたが
それでもジュエルシードの本来の使い方を理解していた稀代の大魔導師だったのだ。

「今回探すのはいわばコアイーターの完了品。
 ・・・多数の人間を喰らい尽くし安定状態に入ったコアイーターという事になります」

「・・・そんなのを使うの?」
人間を大勢喰らったーー禍々しいモノーーそう呼ぶに相応しい代物を頼りにする
まるで御伽噺の中に出てくる悪魔の道具を頼りにする。
そんな感覚にエイミィは顔を少し顰め呟いた

「・・・ええ、そうなります。確かにコレは忌み嫌われる代物です。
 コアイーターが安定し眠る。つまりそこにあった文明を、生命体を喰らい尽くした結果であり
 その元凶を頼りにする事になります」

ユーノははっきりと言い切る。
それは一般の倫理観や善悪観、
そして管理局の基本理念などからすれば赦されず理解されない事かもしれない。
けれどユーノは割り切った。

「コアイーターに取り込まれてしまった命はもう取り戻せません。
 だから、もうこれ以上その犠牲者が増えたりはさせない。
その為になら・・・僕は・・っ?」
ユーノがそこまで言うとクロノが肩を叩いた

「判ってるさ、皆。
 善悪だけじゃ割り切れ無い。でも誰かを助けたいと思う気持ちは何も間違ってない。
・・・そうだろ?」
クロノの言葉にその場の全員が頷く

「さあいこう 今は前だけ見れば良い!」

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