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2009年5月18日 (月)

長編SS 27

ヴォルケンリッターの面々はユーノと共にある管理外世界を訪れていた。
面々と言ってもヴィータ、シャマルとユーノの3人だが。

ザフィーラは余りに消耗が激しいので、強制的に休ませた。
シグナム達もあの日以来まとも休んでいないので、
疲労は溜まっているのだが、
それ以上に失われた記憶を強制的に掘り返すというのは、一歩間違えば精神に障害をきたしかねない。
今回ザフィーラはそれを幾日も行ったのだ。
その為、本人は行くつもりであったが皆で強制的に休ませたのだ。
おそらく今はアルフが付き添っているだろう。

守護獣であるザフィーラが居ないとはいえ
このメンバーは探索には適しているといえた。

本来のヴォルケンリッターは
近接前衛で、いざと言うときには単独行動もできるヴィータ。
守護獣として防御に長け、遠距離からの捕縛も可能なザフィーラ。
管理局でも屈指の癒し手、そして支援魔法の優れた使い手のシャマル。
個人でも歴戦の剣士であり且つ、指揮能力を持つシグナム。

本来は主であるはやてを守り、その手足となる守護騎士達だが
個々でも十分すぎる能力を備えている。

平原や空での大規模戦闘だとしても、一個大隊に近い戦力だが
ヴォルケンリッターの真髄は4人が主の下、その手足のように動ける事にある。

そして今回は戦闘ではなく、遺跡探索
遺跡や建物の中などの狭い空間ほどその連携の強さが影響する。
互いの呼吸すら理解しているヴォルケンリッターに敵うものは居ないだろう。
今回はザフィーラが居ないが、
ユーノはザフィーラと並ぶほどの結界魔法の使い手である。
その穴を埋めるには十分だった。

        ○              ○

「この先なのか?」
「うん」

ヴィータの問いにユーノは振り返り答えた。
今3人は森の中にいる。
森と入っても密林ほどではなく、ある程度人の手が入った管理された森である。

勤務以外の移動なので3人は一度ユーノ個人の知り合いの所から
転移ポートを使いこの世界にやってきた。

「それでこの世界はどういった世界なんだ?」
「あ、それはね・・」
ユーノはポケットから古い紙を取り出した
「それは・・・革?」
「ええ、羊皮紙といって動物・・主に羊等の家畜ですけど、それの皮をなめして作った現地の紙です」
シャマルの問いにユーノは手に持った紙を裏返して見せた。
それはミッドチルダはおろか地球でも滅多に見ないもので、書き心地もあまり良さそうではなかった。

「なんでそんなのに書いてるんだ?」
「遺跡探索等で色々な場所に行くと思わぬ危険に会うことも多いんだ。
 そして荷物をなくしてしまうこともある。
そしてその荷物が現地の住民に見つかっても
オーバーテクノロジーとなって、文明を狂わせない様に極力現地の物資を使うこと。というのが、スクライア一族の決まりのひとつなんです」

「手間はかかるが、意味は判るな」
感心し頷くヴィータ。
「ええ。ということは、その革・・羊皮紙が使われる位というのがこの世界の文明レベルなのかしら?」
「そうです。なのはや、はやての世界で言う中世、ヨーロッパなどに近いようですね」
ユーノはシャマルに羊皮紙を手渡しながら答える。

『なるほど』       
ヴォルケンリッター達は、「はやての世界」ということで地球の歴史についても学んでいる。
その為、ユーノの出したイメージである程度理解したようだ。

「えっと、それでですね、この世界の文明レベルは中世くらい。
ですがある程度魔法についても認識しています。
只、それは天候を占うとか、豊作を祈願するといったレベルなので、
あまり派手な魔法は控えるようにして下さい」

「りょーかい」
ヴィータは空を見上げながら答えた。
見上げた空は澄み渡っている。
確かに文明が発達すれば自然に何かしらの影響がある
だが空気が汚染されている様子も無く、むやみに木々が伐採されている様でもない。
森、といういより樹海に近い雰囲気の中を進みながらヴィータはそんなことを考えていた。

               ○               ○

「今向かっているのは、小さな集落、住人は100人程。
 ですがかつて、管理局から保護されています」
「どういうことだ?」
先頭に立ち道案内をしていたユーノが歩みを遅くしながら話し始めた。
その様子にヴィータとシャマルも歩速を落とす。

「・・ある次元犯罪者が村の側の洞窟に隠れ潜んだんです。
 そして文明レベルの違いを利用し、村を支配・・いえ実験場にしようとしました」
「・・・まさか」

シャマルの呟きにユーノは頷き答えた。

「ええ、ジェイル・スカリエッティです。
といっても彼にとって、ここは数百とあるダミーの一つに過ぎなかった様です。
ですから村人に危害が及ぶことなどありませんでした。」
それを聞きホっと息を吐くシャマル。
だがヴィータはユーノの話し方に嫌なモノを感じ取り表情を崩さず続きを待った。

「でも、それを利用したやつが居ました。
 そいつはスカリエッティの隠れ家を偶然見つけ、そこを利用しだしたんです。
本人の魔力資質は微々たる物でしたが、スカリエッティの隠れ家にあった様々なものを使い
そいつはまるで支配者のように振舞っていました」
「な?そんなことを!」
シャマルの声に頷きユーノは更に続ける。

「ダミーとはいえ、元は管理局の追跡をかわすために作られただけあって、
その施設の性能は下手な実験施設を上回ったから。」
確かに彼、ジェイル・スカリエッティが必要とした設備なら、並のものでは間に合わないだろう。
半ば狂気じみた物があったとはいえその頭脳は管理局をも上回ったのだから。

「けれど、そいつは派手にやり過ぎ、そして執務官に捕らえられました。」
「もしかしてそれは・・」
「ええ。フェイトです。
彼女が教えてくれたんです。隠れ家から外れた所に、数百年前から伝わる伝承とか、それに纏わる場所があるって。現地で保護した少女からそんな話を聞いたって」
「伝承?」
ユーノは頷くと、立ち止まり荷物を下ろした。
二人も向き合うようにして立ち止まる。

「その村に古くから伝わるらしく[生贄を捧げれば森の化身が圧政者を倒してくれる]
そういった御伽噺にも似たものなのですけれど。」
「なるほど。まあ良くあるといえば良くあるよな」
「そうね」
ヴィータの言葉にシャマルも相槌を打つ。
「ええ。割とどこにでもある話しです。でも、ここでは本当だった」
「なに?」

「生贄・・神に認められた素質をもつ子供を生贄にすれば森の化身が助けに来てくれる」
ユーノの言葉にヴィータは直ぐに気がついた

「アレか!」

そうコアイーターのことである
恐らくコアイーターはこの星にも落とされたのだろう。
民衆に都合の良い言い伝えと共に。
古代に支配していたベルカに対抗する為に。

いつの時代でも民衆の中には支配層に抵抗する勢力が生まれることがある。
そして言い伝えや伝説などがあればそれにすがる事も多いのだから。
コアイーターの謂れと年代、そういうのを考えれば
その伝承の「生贄を捧げれば森の化身が圧政者を倒してくれる」というのは
まさにそのことだろう。

「そう。確かにその「モノ」は存在していた」

ユーノは茂みを掻き分けその先を示す。
ヴィータとシャマルも視線を向けるそのずっと先に、静かに佇む家々が見えた。

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